パッチワーク人生

名刺を出して挨拶をする。場の空気をあっためるために、色々な話をするかと思うのだけれど、そんなとき、わたしはけっこう得しているなと思うことが多い。自己紹介で話すような内容にインパクトがあって、しかも経歴が一貫していなさすぎるからだ。

まず、名前。ライターという職業をしていると、筆名を決めることもできるから、「本名ですか?」と聞かれることが多い。「ののか」という名前は父が付けた。ドラマ「裸の大将」の主題歌、「野に咲く花のように」から「野の花」→「ののか」と転じたわたしの名前。もう死んでしまった占い師のおじいちゃんも「そんな名前つけたら大変なことになるぞ」と言ったそうだが、案の定、大変な子に育ってしまった。大して悪いとも思ってないけど、ごめんね。長女は会社で立派に勤め上げ、結婚して子ども産んで、みたいな真っ当な人生は送れなさそうです。

次に、出身地。「北海道」というと、おおかたウケが良い。年配の方には「のびのび育ったんだろうねぇ」と目を細められ、北海道というだけでかわいがってもらえることもしばしばある。それから、「実家は牛を飼っているの?それともジャガイモ?」みたいなことも言われる。そこは期待を裏切って大変申し訳ないが、我が家は事務機器を売る自営業をやっています。ちなみに事務所は庭に置いたプレハブです。

そして、出身大学に関しても驚かれる。見るからにパッパラパーであからさまに頭が悪そうに見えるらしいし、少し前まで家が無いから泊めてくれと言っては、人様の家をフラフラして適当なところで寝たり、酔っぱらって居合わせた人と肩を組んで踊ったりするような人間なので、出身が筑波大学ですというとひっくり返られる。わたしの出身大学を知った相手方はけっこうショックを受けているようで何となく申し訳なくなり、「まぁ、推薦ですけどね」というエクスキューズをつけると、「ほら見ろ」と言わんばかりのドヤ顔をする殿方も多いが、部活が終わってからの時期の勉強は毎日14時間くらいしていましたからね。それだけ勉強しても尚、数ⅠAで30点もとれないわたしはご察しの通り、大バカものなんですけど。

そして、前職である。知っている人も多いかと思うが、わたしはカバン屋で働いていた。カバン屋というと、「職人さんですか?」とか「デザイナーさんですか?」と、聞かれてニヤニヤしてしまうのだが、わたしがやっていたのは営業。わかりやすく言えば、BtoBで、百貨店をはじめとした小売店さんにカバンを売るルートセールスだ。自分の勤めていた会社なので、あまり大きなことは言いたくないが、けっこう有名なブランドだったし、ひいき目なしによく買っていただいていたと思う。間違いなく、安定した未来が約束されていた。でも、合わなくて、1年で辞めた。会社の人が悪いとかそういうことではないし、詳しくはどこかで書くけれど、「ひとりで黙々とPOPのトンボを切るのが一番楽しかった」と言うと、少し察していただけるかと思う。

そのほかにも、フランスのボルドーに1年間留学していてフランス語が話せるとか、3歳から英会話を習っていたとか、編集者の先生の元で2年ほどインターンさせてもらっていたとか、松任谷由美の5・7・5で入選したことがあるとか、何かと話せることはあるけれど、話せば話すほど、「経歴ぐちゃぐちゃだけど、どうして君、今ここでライターなんてしているの?」というところに行きつくのだが、でも、そんなことは置いておいて、名刺を渡して3分話す間に、興味を持っていただけることが多いのはものすごくありがたいし、絶対的に得している。

何かを一貫してやってきたという人にはコンプレックスを抱きまくっているけれど、いろんな要素を散りばめて生きる矛盾だらけのパッチワーク人生も悪くないなと思っている今日この頃です。

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何を書いたらいいかわからないから、半径5mで起きたことを書くよ

文字を書く仕事をしています。なぜなら、文字を書くことがそんなに嫌にならないからです。最初は楽しいだけだったけど、やっぱりたくさん書いているうちに、もっとこういう風に書きたいとか、型が固まってきたとかそういう悩みというか壁が出てきて、うーんうーん悩むことはあるけど、それでも、やっぱり書くことは楽しいです。それが続けていられるシンプルな理由です。もちろん、お仕事をくださる方々あってのことなのだけど。経験のないわたしに、チャンスをくださって、いつもありがとうございます。

早いものでフリーランスになって半年が経ちます。今はWebの業界にお世話になっているのだけど、ブランディングだとか見せ方の部分だとか色々なことを教えてもらって、新しい刺激がたくさんあって、面白いし、やっぱりみんなカッコいいのだけど、みんなを見れば見るほど、「わたし」が埋没していく気がして、スキルも半端だし、企画はない頭をひねって考えるけど根が面白いわけでもないから、わたしの立ち位置ってなんだろうなぁって思って、才能ないのかなぁって思って、枕を濡らす夜は毎日のようです。わたしは書きたいことを書きたいと思って、会社を辞めたのだったのだけど、どれもこれも中途半端。家にこもって一日中小説を書いているわけでもなし、かと言って、編集スキルを付けようとどこかに所属することもしない。ただ、生活を成り立たせることに精一杯で、飛ぶように過ぎる毎日と流れていくあらゆることに関する「べき論」に押し流されそう、押し流されようと思って、今日の今日まで押し流されて、何を書いたらよいのかも、もはやわからなくなっていました。

ただ、その間で気づいたこともあって、どうやらわたしが、というよりはわたしの身の周りで起きていることは見る人によっては面白く映り、また勇気づけられるようなのです。話していることは何の変哲もないわたしの日常であって、そんな特別なことはないはずなのですが、それでも腹を抱えて笑ってくれる人のあること、涙を流して救われたと言ってくれる人が一人でもあれば、それでいいのではないか。極め付け、わたし自身が楽しければそれでいいのではないかと開き直ることにしました。

「ののかの日常を書いてよ」

もう誰に言われたのか忘れたけれど、誰かには絶対言われたはずなので、わたしの日常と出会った人たち、過去のことなど、私の半径5m圏内で起きた出来事を書こうと思います。

面白くないかもしれないし、ネット上のゴミになるようなことも多いかもしれないけど、まだ見ぬ誰かの希望になりますように。

わたしは、いつか誰かの琴線ぶっちぎる。

ようこそ、わたしの煩悩ファンタジー世界。

家なき子に終止符

特段、面白いことでもないと思っていたから、何かで発表するようなことでもないと思っていたのだけど、半年くらい家がありませんでした。

家がないというと語弊があるな、千葉の奥のほうに大学生の妹の家があって、荷物はそこに置いておかせてもらって居候していたんだけど、取材だとかいろいろで、結局、東京に週6で通っていて、次の日が早いとか、連日東京に出るから交通費がもったいないとか考えていたら、ふらふらするような生活が続いたという感じだ。

その日の気分で帰ったり、帰らなかったり、会いたい人に電話をして泊めてもらったり、1人になりたいときはスーパー銭湯とか、ネカフェに泊まった。布団がないおうちでは床に寝た。元々、外国の空港のトイレで寝たり、48時間高速バスに乗りっぱなしでもぐうすか寝れるタイプの人間だし、虫とか汚さみたいなものもわりと平気だし、無頓着な人間でよかったと心底思っている。

荷物は、ザックと手持ちカバン。入っているものに大したものはなくて、パソコンとカメラに本、貴重品のほかは、メガネとコンタクトの洗浄液と歯ブラシがあれば事足りてしまう。服は着ているもののほかに、もう1着。パジャマは荷物になるから持たないし、借りると着替える手間になるから着ない。起き抜けにいそいそと化粧をしたり、髪の毛をセットしたりして洗面台を占拠するのも、わたしより断然朝が忙しい家主たちに申し訳ない気がするから。だから、セットしなくて良いように、自ずと髪は結わえるように、家を出る直前の化粧は口紅だけになった。

不便じゃないんですか?とか、疲れ取れないでしょ?と、よく聞かれるけれど、慣れれば別にそんなことはない。むしろ、家に帰る前提での軽装で歩くほうが怖い。家を持たない暮らしについて、ミニマリスト的感覚だね、と言ってもらったことがあって嬉しかったけど、正直なところ、生粋のミニマリストなのかは疑わしい。ただ、いつ何時、どんなことが起こっても、自分の身ひとつで何とかできる状態にしておきたいというのは確かだ。そう考えると、ミニマリストの領域に入るのかな、まぁどっちでもいいや。皆さんに決めてもらおう。

帰る家もなく、どこかの会社に囲われるでもなく、実家の、という意味以外に自分の家族もなく、わたしは完全に自由だったし、いつも誰かと一緒だったから寂しくもなかった。だからときどき、憐みの目で見てくる人があったけど、気分を害すのとはまた違う気持ちというか、何と言うかあんまりピンとこなかったように思う。

それでも拠点を持ちたいなと思ったのは、住みたい街が見つかったからだ。波長のあう人たちがたくさんいて、磁場が強い街。もの書き志望の人間があの街で風呂なしアパートに住むなんて、ベタすぎる展開に胸やけがしそうだけど、中学生のときから憧れて、東京にまでわざわざ遊びにいくくらいだったんだから、あの頃のわたしの夢を叶えてあげたと思えばいいか。

ちなみに家に風呂がないと言ったら、父親が嬉々として、引っ越し祝いにたらいを買ってくれることになった。昔、オリーブオイルが凍結するほど寒い家に住んだときは、ストーブでなく、作業用のつなぎを送ってくれた父。やっぱりわたしは、父の子どもだと思う。

下北沢のボロ屋に住むよ。煩悩ファンタジー世界への通行証は、一升瓶か角瓶でよろしくね。